「ツボ」を突く。

色々な「ツボ」を突いてみる。

柔道に思う。何故、「オリンピック・スポーツ」に「関節・絞め技」が含まれているのか?

 昔通った中学は、体育の「必修武道」が「柔道」だった。

 


 最初の方に多少「座学」があって、柔道の歴史などを学ぶ。

 

 創成した嘉納治五郎は、色々資料なんかを見ていると、近代当時の日本が世界でのス

テイタスを得るために「日本人なりの紳士(ジェントルマン)」を模索していて、その

バックボーンに柔道を据えようとしたのではないかと思う。

 

 学生の頃、小学生にサッカーを教えていて、「体のぶつけ合い」や「面と向かう敵と

の間合いの取り方」なんかに武術の要素を取り入れようと、空手や柔道などを色々見て

みたことがあった。が、競技経験がなく、格闘技側からのアプローチの仕方が探れずじ

まいだった。

 

 それでもそんな中、「あれっ?」と思い始めたのが柔道だった。


 嘉納治五郎の思想には深く敬服するが、その「競技性」にどうも納得がいかない。

 

 オリンピックには、もう形骸化しつつあるが「代理戦争」という意味合いがある。そ

う、本物の戦争で無駄に「死人・ケガ人」を出さないために生まれた側面がある。そし

て、転じ進化して「安全な競技性」で「切磋琢磨」して最高のパフォーマンスを観衆と

分かち合うのがオリンピックの本質となってきている。

 
 もちろん、競技によっては…例えば冬季の種目「スケルトン」などは危険性が一目瞭

然で、残念ながら、たしかここ2,3回の冬季五輪の中のいずれかで秘かに選手が亡く

なっている。それでも、使用器具・コースいずれも回を追って改善されている。

 

 同じ格闘技系でも、ボクシングはヘッドギアを、フェンシングも面に防具があるし、

よほどのアクシデントでないと大けがをしないように配慮されている。


 その中で、「半意図的」に且つ競技中のサジ加減一つで簡単に大ケガにも死亡にもつ

ながる危険な技が認められているのがこの柔道なのである。ここでようやく登場、「関

節・絞め技」だ。関節技は、ザックリ言うと、「関節を反対に曲げる」である。「骨折

や脱臼の大ケガに至ると判ってい」て、さらに曲げていくのである。「絞め技」も同

様、この後「失神・窒息すると判っていて」絞め続けるのである。現実的な「大ケガ・

死」でもって相手を「脅し」て「降参・敗北」を迫るのである。‐‐‐実際の戦争・戦闘・

格闘と何ら変わりない。

 

 オリンピックの同じ格闘種目に「レスリング」があるが、関節技や絞め技なんてもの

はない。

 

 関節も絞めもプロの総合格闘技ですら、ほんの一瞬、選手自身の「タップ」やレフェ

リーの「ストップ」が遅れて、失神・脱臼・骨折…なんてしばしば見る。

 

 だから、関節技で起きるケガや事故は「不可抗力」ではない。ある意味、歴(れっき)

とした「業務上過失傷害」と言える。


 何でそんなモンが「オリンピック競技」で認められているのか?

 

 柔道はご存じの通り、「打撃」禁止である。そして「関節技」はOK。んっ? いず

れも「相手の体を破壊する動作・体技」である。何故、関節はOKで打撃がダメなの

か?


 もちろん、中学の授業で関節技は最初から「禁止事項」である。だからと言って「大

人になったら関節を反対に曲げてもケガしない」訳もないのである。

 

 本来、こういう事象への欧米などの認識と対処は素早いものなのだが、『「公正」を

重んじる武士道NIPPON』みたいな思い込みがあるのか、長年見逃されている。


 ただ、もし今この時代に嘉納治五郎が生きていたら、どうだったろう?

  

 そもそも、嘉納自身は(後の)東京大学を出た後、学習院や(後の)筑波大学などに

勤務、井上円了が創設した東洋大学の前身「哲学館」で教鞭も執っており、倫理学の研

究著書なども出していることから、常々「アップデート」する姿勢は持っていたと言える。


 実際に本人が語っていた言葉などを辿ってみると、今の腰が重い柔道組織とは違っ

て、どうも一応『柔道』と形作ったが、文字通り「粗削り」なもので課題が出次第、改

善していこうという姿勢がみられる。

 

 実際、同じように柔術から生まれた「合気道」などは、最初から「常用する技」とし

て関節技が組み込まれているので、その危険性から「試合(match)形式」は取らな

ず「演武」としての完成や精度向上を目指す。

 

 恐らく、柔道が世界的スポーツとして老若男女に親しまれる現代に生きていたら

(1940年幻の東京オリンピックの招致に尽力していた時は、柔道がオリンピック競技に

採択されるとは夢にも思っていなかっただろう。)、晩年まで武術武道の研究に勤(い

そ)しんだ彼なら間違いなく気づいていただろうし、何らかのアクションを起こしてい

ただろう。

 


 ええええっと、それなら…、ちょっと待てよ?

 近年の日本柔道の不振を見ていると、関節技の要・不要どころじゃねえぞ…。

  

 次回でもうちょっと書いてみたい。

  


 合掌。